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彼が好きだった音楽は、最近また聴けるようになった。心の方向を決めたからだと思う。
彼が買ってくれたルブタンのローファーは、天気のいい休日に大切に履いている。
ベランダでトマトジュースを飲みながら、仕事帰りの身体に夜風を纏わせ、そっとまぶたを閉じた。
形のある物もない物も、高丘さんへの気持ちを総決算するように持ち出し、毎日浸っては想いを募らせ、ここでの過去に懐かしさを感じ、少しずつ解放しては手放す。
「私も高丘さんみたいな人、すごくタイプよ」
出会った時も、再会した日も言ってくれた言葉を真似て呟いてみた。たったこれだけなのに、心が素直になれた気がして軽くなり、もっと早く言えばよかったと寂しく微笑んだ。
今夜も春が目覚めそうな星空に、彼への想いをまた1つ放り投げた。
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