133人が本棚に入れています
本棚に追加
「HILLS CARE様がお見えになっています」
続けて聞こえてきた受付の声に、思わず目を見開いた。
「……畏まりました。フロアの来客室へお通ししてください」
まだ彼が来たとは限らない。彼の会社だというだけで動揺を隠しきれず、愛名ちゃんに小さく笑われてしまった。
「新規の案件っぽいけど、愛名ちゃんが行く?」
「私、これから来期の新入社員教育の会議に出るんです」
「そう……だったわね。頑張って」
天井を見上げて、高丘さんではないことを祈る。
いま再会したら、永久の眠りにつこうとしている恋が春風に舞い上げられてしまう。2度目の恋が始まってしまったらと思うと、戸惑いに手が震えてきた。
会いたい。会いたくない。
細くて微妙な境界線を綱渡りするように、ゆらゆらと心が動き出した。
最初のコメントを投稿しよう!