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辺りが薄暗くなり始め、空には最初の星が強い光りを見せている。
徐々に通行人も疎らになってくる。一瞬の静まり返った住宅地。
が、あちこちからの家からは灯りが点き、やがては家の中からそれぞれの会話が飛び交う。
殆ど通行人がいなくなった通路は、一方方向に進む車が時折通過して行った。
等間隔に置かれてある街灯の灯りは、やはり街灯のない場所とでは安心感が違う。
そんな夜の時間帯へと変わった今、懐中電灯も持たずユラリと歩く人影。
靴を履かず、裸足のままヒヤリと冷えたコンクリートに触れる。
砂利道でなくともコンクリートは多少は痛い筈。しかしその者は慣れているのか、そんな素振りを見せることなく、ただ歩いていた。
どこへ向かっているのか、何の目的があるのかは分からない。
暗い中、街灯の灯りだけが頼り。
すると、前方から二つの灯りが見えた。それは車のライトで、一方通行のため減速しながら走ってくる。
車特有の走る音がだんだんと聞こえ始め、一つの影のところまで距離が縮まる。
通行人がいればより減速して通過するところなのだが、車は変わらず一定の速度のままそこを通過して行った。
そして走り去った後は、街灯の灯りが何も映らない地面をただ煌々と照らしていただけだった。
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