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教室に戻ると、教室内の生徒達の目がこちらに向けられた。
声を掛けるでもなく、ただただ見つめるだけ。
それも冷たい目が一斉に向かっている。
恐る恐る少年は、席に着いた。
同時にチャイムが鳴り、午前の授業が始まった。
やっと午前と午後の授業が終わり、放課後。
皆より先に帰宅する為に、さっさと下駄箱へ早足で向かった。
一日経てば、夏の暑さで制服も髪も乾く。
乾くまでは椅子も机も、教科書やノートも濡れた。
保健室でタオルを借りたかったが、授業に遅れて何か言われたくない。
だから濡れたままで授業を受けていたが、担当の教師から何故全身ずぶ濡れなんだと言われて。
教室内に笑いが起こった。
下駄箱で立ち止まり、外靴へ履き替える。
嫌な一日だった。
長かった一日も、後は家に帰って部屋に居ればあっという間。
学校を出て、早く帰ろう…。
グラウンドに来て、ふと遠くの校門の辺りに目をやった。
何だろうか。
校門に誰かが立っている。
しかも手招きをしているように見える。
それを見ているうちに、何だか周りの音が静寂へ変わった。
蝉の声も聞こえない。
止めていた足を動かし、少年は何かに誘われるようにして校門へ歩く。
彼の目は生の目を宿していなかった。
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