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「あの、――ガジュマルが」
身を屈め、急いでヒールを脱ぎにかかる。
「今朝、日光浴させようと思って、ベランダに出しっぱなしに――」
「大丈夫。入れといたよ、中に」
「……」
動きを止めて顔を上げると、宇佐美くんが自分の肩越しに、あまり広くない部屋の奥を指差した。
窓際に置かれたスチール棚の定位置に、
小さなガジュマルの鉢植えがちょこんと乗っているのが見える。
――よかった……。
安堵のあまり体の力が抜け、わたしは長く息を吐いた。
「ありがと……。風も強かったし、もうだめかと思った……」
宇佐美くんは困ったように微笑み、手の甲で優しくわたしの頬を撫でた。
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