第1章

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できるだけギリギリまで時間を作らないように登校する、というのがいつものことであった。5分前でも3分前でもダメだ。何か稀に、「信号に3連続で引っかかった」「忘れ物をして家に戻った」という出来事に遭遇したときのためだ。10分前がベスト。 トイレへ行き、誰もいない空間に鏡の前に立ち、スマホを取り、いじる。ネットニュースのトップを見る。「南朝鮮が再びミサイル予告」「岡田洋一、20歳差婚」「カラムーチョ異物混入事件の犯人逮捕」 8分後、教室に戻り、席に座った。さすがに始業2分前ということで僕の席に座っている人はいなかった。窓際の席から見える、窓越しの景色ほど普遍的なものはない。苗木の数々、大木の数々に視線を移しながら、何か考えるわけでもなく、ボーッとする。 その最中、いろいろな思いがこみあげてくる。 ・・・進路どうしよう。 もう高3・・・。いよいよ逃げられない時期にまで来た。いや、ここまで逃げてきた自分をたたえるべきかもしれない。よくぞここまで逃げ切った。未来という希望が今のところ見えないものから、ここまで避けて通ってきた。おめでとう!さあ、ここからが勝負・・・もう、逃げられない、逃げようにも逃げられない、避けては通れない・・・ 始業のベルが鳴ると、クラスの人たちが一斉に自分の席に着き始めた。まだ担任が来ていないのにみんな口数も減らしつつ席に着く、こんなマジメっぽいクラス・・・いや、みんながマジメというわけではない、ただ担任が怖い、それだけの話なのである。 数秒後、担任が現れた。 教室に入ってくるなり、「なんだこれは!」と落ちている菓子の包み紙っぽいものを手に取り、教壇の前まで持ってくると、それと掲げすぐに説教が始まった。 「ふざけるな!お前らもう3年生だろ!!こんな幼稚な真似をするくらいなら、学校をやめろ!馬鹿野郎!!」
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