あの夏を待ってた

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「いらっしゃいませ」  鳴り響くカウベルの音と、低音で発せられたマスターの声。  店内はヒンヤリとして気持ち良く、その風を感じた瞬間、さっきまでの目眩は嘘のように消えていた。  かと言って、何も頼まず店を出る訳にはいかない。  私は誰もいないカウンターの席に腰を降ろした。 「ご注文はお決まりですか?」  そうマスターに話し掛けられ、慌ててメニューに目を走らす。 「えっと……コ、あ、アイスティーを、下さい」  かなり焦った感じで告げたそのオーダーに、 「はい、かしこまりました」 とマスターが爽やかな笑顔でそう答える。
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