PROLOGUE

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心地良い晴天の中、時折吹く風が桜の花弁と僕達を包む 新しい道へと進む若者たちの背中を押すかのようだ、そんな事を考えたのはきっと僕だけで。 歩き読みしていた小説のページに花びらが落ち、それがあまりにも可愛らしかったので栞にしようかとも悩んだ。 そんな花びらにも負けない程愛くるしい少年が目の前に現れたのは、それから数分も経たない時だった。 別に特別なことではない。 風に吹かれよろけた少年がぶつかって来た……という良くある、小説のヒトコマにもならないような日常だ。 それなのに何故、こんなにも気持ちが高揚しているのか……。 その少年は、とにかく小さかった 小人、という訳ではない。日本の男子高校生の平均身長よりは低いという程度だ。 しかし頭上で一つに束ねられた長い髪と、そのような髪型でも違和感を感じさせない童顔のせいで、余計に小さく思えてしまう 制服姿でなければ、少女と間違えていたかもしれない。 これは単なる偶然ではない これから始まる、壮大な物語の一行目かも 数分間の出来事でここまで考えてしまうなんて妄想癖がすぎるだろうか でも彼は、自分にはない物を沢山持っている気がしたのだ 14センチ程のその「距離」 その先にあるものに触れてみたくなった ここが始まり 逃げるだけの日々を送ってきた僕と けして平凡ではない日々を送ってきた彼の 新しい世界の始まり
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