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少し古びた校舎の前に、僕はいた。 本を片手に、時々前を見てぶつからないように歩く。 時々、風で散った桜の花びらが本のページに挟まると、春を感じて頬が綻んだ。 ここは、おとだんの愛称で親しまれている音ヶ(おとがはね)男子高等高校。 この僕……小野有斗(おのゆうと)が今日から三年間、通うことになる高校である。 このおとだんは、地元では人気がかなりある。 部活動に力を入れているのと、校舎やグラウンドが迷子になりそうな程広いのが理由だろう。 偏差値もそれほど高くないこともあり、今年の競争率はすごかったと聞いた。 図書室の設備も素晴らしくて、そこが僕の志望理由でもあった。 その他の理由は……地元から離れているということ。 人の視線が嫌いだ。 そんなに目立ったことはしていない筈なのに、なぜだか人は僕を見る。 そのせいで、中学校ではとにかく居心地が悪かった。 常に一人で本を読み、休み時間や放課後になると図書室で過ごしていたりしただけなのに…… ……まぁ、逆に友達がいなさすぎて浮いていたような気もするけど
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