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僕の肩とぶつかったのはおでこだったようで、そこを手で押さえていた。
「あ、えっと、ごめん。ケガはない?」
ぶつかられたのは僕の方だが、謝罪をする。
しかし彼は「あ、いえ……」とほとんどフリーズ状態。
何が起こっているのか理解できていない、そんな顔をしてこちらを見つめていた。
ほんの数秒の出来事だったかもしれないが、僕には数分に感じられた
舞い散る花弁も、風でなびく髪も、瞬きすらもスローモーションで映る
数分……実際には数秒の空白の末、彼はやっとフリーズ状態から回復して、
「す、すすすす、すみませんでしたあああああああああ!」
と、叫びながら校舎の中へと全力で走って行ってしまった。
中から「こらー、そこの小さいのー。廊下を走るなー」という教師の声と、驚いた生徒たちの声が聞こえてくる
「え、えっと……。なんだったんだろう……」
叫び声でスローの魔法は解かれ、我に返る。
よろけた少年が、僕にぶつかった。
それだけのことなのに、彼から目が離せなかった。
キラキラと輝く大きな瞳に、引きずり込まれそうになったのだ。
果たして彼は、何者なのだろうか………。
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