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「......何故その言葉を?」
「柊さんが寝ぼけて私を見つけるなり言ってました。
何なんですか?市松人形って?!」
その言葉を聞くなり、柊さんは口を覆っていた手を額に移動させた。
ここから見える彼の姿勢は「後悔」以外、例えようがない姿勢だ。
「寝言でそれを?」
「はい、ね、寝言です」
そしてため息を吐いた。それも大きい大きいため息だ。
そのため息は、私がさっき駐車場で眠りに着く間際に聞いたあのため息にそっくり。
やっぱり、私を拾ってくれたのは間違いなくこの人だったんだ。
「その言葉は......もう、忘れてください。それよりも大丈夫ですか?」
頭を振り、私へとちゃんと向き直ってくれた。
ネクタイもしていなくて、シャツのボタンも第2まで外した柊さんの姿は、いつもの彼の名残はなくて別人を見ているようだった。
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