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第一節
―思うんだ。
この大地には数億の人々が住み、毎日、たくましく生きている。その国民は皆、平和を望んでいる。しかし、その平和とは、人それぞれの理想や欲にまみれ、純粋な平和を望んでいるものは少ない。
私が今、王となってはいるが、現に西方の集落には不満を蜂起させ、大きな部隊を形成していると聞く。いつ、この城が攻め入られてもおかしくないのだ。この城下街にも多数のスパイがいよう。もしかしたら、この城の内部にもいるだろう。
毎日、刻々と状況が変わる日々に目を向けなければならない。そして、心優しく人々を導くのが、真の王であるだろう。
「アルテミスよ。明日、私は王を退く。次期の王はアルテミスだ。女王となり、アルテミスが見聞きし、判断するのだ」
いつもと何ら変わらない月明かりが私たちを照らす。
王とアルテミスは、二階のバルコニーから城下の明かりを見ながら話している。
時折、木々が風で揺れ、落ち葉が地面を遊んでいる。
「まるで鬼ごっこをしているようですね」
アルテミスが父である王に言った。
「何がだ?」
「落ち葉です。風が吹くと、追っかけっこをしているように地面を舞っていくのです」
「アルテミスよ。その心優しい気持ちを忘れるでないぞ。美しいものを美しいと感じる心をいつまでも持っていくのだ。そなたには、武力もなければ、知識もない。しかし、その心があれば、大きな力を動かすことができる。絶対に忘れてはならない。武力も知識もなくても、大きな力を動かせることを」
「はい」
「アルテミス、人々は願っていた。暗闇だったこの地も、こうして明かりが灯り、人々は安心して暮らせるようになった。人々が望んだすべてがこの城下にある」
「はい」
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