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刻一刻と継承の儀が近づく夜更け、アルテミスは寝むれなかった。11歳の私には、王の意味すら理解できていない。父の王務を近くで見ていただけで、ただのお仕事だと思っていた。しかし、父が時々見せた、鋭い眼差しで部下に指示をする姿は、鮮明に残っている。私には、あんなに優しい目なのに。
(王…。私は…)
いつの間にか、私は眠っていたようだ。
徐々に空は明るくなり、朝がやってくると、一羽の大きな鳥のかけ声で動物たちは目を覚ます。
小鳥たちの鳴き声と共に、人々の声が聞こえ始める。
アルテミスも眩しく顔に射す朝日の光で、目を覚ましたが、光の当たらない布団へ潜る。
間もなく眠気が、再びまぶたを閉ざしていく。
すると、窓の外が賑やかになっていることに気がついて、再び目を開ける。
布団が恋しい身体をゆっくりと起き上がらせる。
窓枠の隅からそっと外を覗くと、城の広場にはたくさんの民が集まっていた。
重い身体と呼吸を合わせながら身支度を済ませ、急いでバルコニーへ向かった。
「アルテミス。よく眠れたか?うむ、その顔はよくは眠れていないようだな」
すでに父はバルコニーの手前にいた。アルテミスを待っていたようで、バルコニーの手前に立っていた。
アルテミスが到着すると、息を整える間もなく、親衛兵が私たちを取り囲むように護衛し、バルコニーへ上がった。
私たちの姿を見た民衆は、歓声を響かせた。
歓声が私たちに集中する中、集まったたくさんの民がアルテミスの目に映る。
拍手をしている人や正座をして頭を地面につけている人、腕を組んでいる人。様々だった。
子供たちは、駆けて競い合っている。
城と街を繋ぐ街道を見ると、広場に集まらず、仕事に勤しんでいる民もいる。
父は規則という、しがらみを嫌い、民には自由に生きて欲しいと強く願っていたためだろう、王を迎える仕方を定めていなかった。
しかし、幼いころの私の記憶には残っている。
王務をしている父の横で、おままごとをしている私を愛おしむような優しい目で見ては、自由なことが本当に自由なのだろうかと、つぶやいていた。
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