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「頭を下げている者、頭を上げて聞いてほしい。これまで、この城下街を中心とする7つの街は、急速な発展を遂げ、他国との貿易も果敢に取り組んできた。それもこれも民である皆が私たちを守ってきてくれたからである」
父が話しだすと、歓声は止み、王の言葉が建物に反響し、全体に広がっていく。
「その心優しき寛大な器で、娘であるアルテミスを助けて欲しい。今日(こんにち)、アルテミスは11歳となった。本日をもって、私は王を退き、アルテミスが女王を継承する」
再び歓声が上がった。民衆の中では、以前よりアルテミスが継承するのではないかと囁かれていたためか、驚く者はいなかった。
「アルテミス。一言、民に言って終わりにしよう」
父は、一歩後ろに下がると、アルテミスを促した。
圧倒される大きな歓声に、アルテミスの身体は小刻みに震えていた。
石のように硬くなった身体を奮い立たせ、一歩ずつ前へ進み、父の前に立った。
首筋にぶるっと走りむず痒い。
「あの、よろしくお願いします。…皆が笑顔になりますように。…小さなお花を大切にします。山羊やお馬を大切にします。もっと人を思いやって大切にします。…これからも変わらない日々を…努力し…願い…頑張ります」
皆に言葉が届くよう、大きな声で言うたびに、足がカサカサと震えた。
最後に、アルテミスは目をつぶり、右手を開いて心臓の鼓動がする左胸に手をおいた。ひとつ深呼吸をして、後ろへ下がった。
歩く足は地面を踏んでいるように感じなく、宙に浮いているようだった。
親衛兵が守る中、私たちはバルコニーから城内へ入っていく。
城内に入ると、親衛兵は、父に一礼して持ち場に戻った。
私たちの姿が見えなくなると、徐々に歓声は静まり、元の平穏な時が流れ始めた。
小鳥たちも居心地の良い場所を見つけては呼び合っている。
父とアルテミスと父の腹心、三人は、話しながら玉座のある部屋“玉座の間”へ進んでいく。
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