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「おいチビ。お前どうすんだ。」
「ここで待ってま~す。」
こちらも仕返しとばかりに軽く両腕をばたつかせるも、鴉さんは屁でもないとでも言うように、何事もなく女の子の目の前へと飛んでいった。
なんっか悔しい。
種族の違いとはいえど、こんなあからさまな差を見せつけられるのは好きじゃないし、多分、鴉さんともう一人、先生以外にチビなんて呼ばれるとできる限りの力でもって仕返ししてやるのに。
一人チュピチュピと意味もなく声を漏らすと、上手くいったのかボクの居る木の少し遠くでキャアッと小さな悲鳴が上がった。
結局、真正面から大きく黒い翼を広げ威嚇し、隙を狙う作戦にしたようだ。
女の子達には悪いが、鴉さんはどうにもゴミを漁ることが嫌いなようなので、彼が生きるためだと許してもらうことにしよう。
ボクは何もしてないんだけどね。
バサバサと低音の羽ばたきが聞こえたと思うと、鴉さんはホクホクの肉まんを抱えて先程と同じようにボクの隣に腰を下ろした。
それにしても。
「鴉さ~ん。」
もぐもぐと口を動かして、肉まんを堪能している鴉さんは返事をせず、視線だけをこちらに向ける。話は聞いてくれるみたいだ。
「どうして、肉まんだって分かったんですか~?」
鳥の嗅覚は基本的に発達していないし、ボク達の居たところから彼女達がコンビニから出てくる姿を見るのは不可能だ。
だとしたら、鴉さんはどうして袋の中身が肉まんだと知っていたのだろうか。
ちょっとだけ、疑問だったのだ。
「袋のサイズ。と季節。」
ごくんと喉仏を上下させて最後の一口を飲み込んでから口を開いた鴉さんの回答は、簡潔すぎて分からない。
ボクが首を傾げているのに気が付いたのか、鴉さんは一度溜息を吐いて、口を開いた。
紅い瞳に呆れの色が浮かんでいる。
「チビ。今の季節は?」
「冬ですね~。おかげでボクももこもこで~す。」
とりあえず素直に返すと、後半はいらねぇと一蹴された。
ちょっとしたお茶目だったのに。
「冬の帰り道に買い食いなんて、肉まんだって相場が決まってんだよ。どっか休憩できる場所探してたみてぇだからその場でつまめるもんだろうしな。」
最後に罵倒が飛んで来なかったのは、ボクが雀だからだろうか。
成程、鳥頭とはよく言ったものだ。
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