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「......そんなに頭がいいのに、どうしていつも力づくで食料調達してるんですか~?」
「あ?んなの、お前や鳩とちげぇからに決まってんだろ。」
鴉さんは、木の枝の上に器用に体を横たえた。一つ欠伸を漏らす。
お腹が膨れて眠くなるなんて、何とも幼い人だなぁ、なんて思っていると長い脚で軽く蹴られた。
まるでボクの考えが伝わってるみたいだ。
「雀や鳩みたいに、チュピチュピ媚び売って食ってけんならそうしてんだよ。とっくにな。」
うつらうつらと眠気と戦っている姿が何とも言えない切なさを沸かせる。
別に同情しているわけでもないけど、何となく寂しくなった。
ボクや先生と違って、カラスは人間に害鳥のような扱いを受けているのは周知の事実だし、それを知っているからこそ、鴉さんも最初からボク達のように人間に餌を求めないのだ。
「なんか、悲しいですね~。」
人間にいろんな人がいるように、カラスにだっていろんな性格のカラスがいるのに。
例えば、鴉さんみたいにゴミ漁りが嫌いなカラスとか。
それを理解されない鴉さんは何度心を痛めているのだろうか。ボクには、想像ができなかった。
「というか、鴉さんが武力行使の作戦やめれば少しは変わるんじゃないですか~。」
こんなにも賢いのだから、穏便な作戦だっていくらでも立てられるだろうに。
「は?嫌だね。そんなもん、楽しくねぇだろ。」
「......は?」
「だから、穏便な食料調達なんて楽しくねぇだろ。あの人間の澄ました面が驚くのは見ものだぜ。」
ふわっと大きな欠伸を漏らした鴉さんに、思わず両肩が下がる。
ボクの心配は杞憂に終わったようだ。
本人が気にしていないのだから、ボクが心配するものでもないし。
それにしても、残念な人だなぁ、とそう思うのはボクだけだろうか。
賢いのに、それを有効活用する術を持っているのに。
なんでこんなに自由人なんだ。
「おいチビ。帰んなくていいのか?そろそろ日が暮れんぞ。」
そういいながら、カァーと何ともやる気なさそうに一声鳴いた。
夕暮れ時のカラスの役目を果たしたつもりなのだろうか。いい加減な人だ。
「ボク、もう大人ですよ~。」
ボクの発言に心底驚いたように目を見開いた鴉さんに、遠慮なく一撃かましてやった。
あんまり効果はなかったようだ。
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