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少年が目を覚ましたのは真っ白な部屋だった。 そこには何もなく、不気味に思えるほどに寂しい所。
彼はそこで何も考えることもなく、ただただじっとしていた。
そこに一人の老人と少女がやってくる。 彼はその二人を無言で見つめていた。
「目覚めたか……ついて来い」
老人の感情のこもらない言葉。 それを耳にした彼はまるで従うかのように、老人の後を追う。
不気味な白い部屋を跡にして、老人の後をついてきた彼が次にたどり着いた部屋は、武器が壁にいくつも飾られていた部屋だった。
「選べ」
淡々とした一言。 詳しく説明されてもいない言葉であるのに、彼は言われるままにその部屋に飾られていた剣を手に取った。そしてまるで彼はすべてを理解したようにその部屋から出て行き、隣にあった部屋に入って行く。
扉を開くとそこには鉄の床と鉄の壁に覆われた殺風景な景色が広がり、壁には一つだけモニターが取り付けられていた。
そこには先ほどまで老人と共にいた少女が真ん中に立っている。
束ねられた白く綺麗な髪。 端整な顔立ちにまるで感情がないと言わんばかりの無表情。 それはどこか不気味な雰囲気を醸し出している。 その少女の手にギラりと光る凶刃を持つ槍があった。 それが何を意味しているのか――それを彼は理解していた。
『……理解はできているな。 なら、始めるがよい』
モニターに老人が映り、始めろと命令を二人に下す。
彼は目を覚まして突然こんなことになった事に驚きはしなかった。 疑問も持つこともなく、ただ言われるがままに言われたことを実行する。 何故そう動くのか、彼自身わかっていなかったが、それを拒みこともない。 まるで本能に従うように動いているだけだ。
――故に、彼は剣を構えて少女を睨む。
少女は一切表情を変えることなく彼を観察するように見ていたが、やがて槍の矛先を彼へと向けた。
そして二人は同時に地を蹴り駆ける。
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