始まりの始まり

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突き放たれる少女の一撃。 それを横に逸れて躱した彼は剣を少女の顔めがけて振り下ろす。 一瞬のうちにして攻防は終わり、少女の頭から鮮血が飛び散る――はずであった。 「あ……」 小さく漏れる少年の声。 振り下ろすはずであった彼が持つ剣はその手から離れて地面に転がる。 少女が槍を一瞬で引き戻し、剣に向けて叩きつけたからだ。 呆気に取られる彼。 その彼の耳に風を切るような音が二つ聴こえる。 それは少女が左右に二度袈裟斬りを行い、彼の体を斬りつける際に槍を振った音。 そして彼の体から大量の血が噴き出した。 「え……ぁ…………」 激痛が彼の体を走る。 初めて感じた痛み――それがこれほどに大きなものであることに彼は驚いた。 そしてよろめき倒れそうになったその胸に――――槍の矛先が突き刺さった。 「――ぁがっ」 それはやすやすと彼の体を貫通し、槍の刃は血に染まる。 そしてそのまま壁に向けて槍を彼ごと投げ飛ばし、壁に縫いつけた。 鉄の壁はその一撃に耐えきれずにへこんでしまう程の威力。 それを彼女の細腕はやってのけた。 これで決着は呆気なく着いた。 少年は何も出来ずにただやられ、少女は返り血を浴びただけで終わる。 時間にして一分と経たずに全てが終わった。 壁に槍で縫い付けられた少年はピクリとも動かなくなり項垂れる。 少女はそれに近づき、顔色一つ変える事無く槍を引き抜いた。 それに連なるように彼は胸に空いた風穴から血を流しながら床に倒れ込み、鉄の床に血だまりを作って行く。 「……弱い」 初めて発した少女の言葉。 それは感情のこもることのない無情の言葉だ。 ただ一言発した彼女は倒れ込んだ少年の服を掴んでズルズルと引き摺り、扉へ向かって歩き始めた。
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