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入江杉蔵は甘味処に通うのが日課だった。
勉学で疲れた頭を甘味で癒すのだった。
今日は弟と共に《松屋》の外席に座り、団子を咀嚼している。
「お夏ちゃんお代わりを。」
直ぐそこで先客の皿を片付けていた店員のお夏に空になった皿を差し出す。
「畏まりました。」
愛想の良い笑顔で皿を受けとると奥へ消えて行った。
其処へ小さく、棒の様に細い少女が箒を持ってでてきた。
薄い色の髪、睫毛が目を惹いた。
儚げな印象の少女だ
入江は少女に近寄る。
「ねぇ君、名前は?」
「へ。」
肩をピクッと跳ねた。
大きな目が入江を見上げる。
「え…と咲と申します。」
箒を握る手が震えている。
否、震えているを通り越して怯えているようにもうつった。
「ね…」
「お咲!何してるんじゃ!?早う戻って廊下を拭きな!」
「は、はい!」
咲の怯えの色が明確なものになった。
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