風邪をひいた日

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「うん。じゃあ、左手出して」   起き上がってケースを受け取ると、 「寝てて」って懇願されるようにみられたけど、 ……気付かなかったことにしよう。 指環を出して、 差し出された左手の、薬指に嵌める。 「これあげたとき、 ずっとゆずちゃんと 一緒にいる証しだっていったよね」 「……うん」 「この指環に誓って僕は嘘をつかない。 風邪くらいで死んだりしない。 これからもゆずちゃんと一緒にいる。 だから、安心していいよ」 「……わかった」    ……納得はしてくれたみたいだけど。 それでもまだ、 ゆずちゃんの顔は不安でいっぱいだ。 手を伸ばして抱きしめると、 震える手で服を掴まれた。 「大丈夫。 僕はゆずちゃんを一人にしない。 第一、ゆずちゃん放ってあの世に行ったら、 おばあちゃんから『なにしに来た!』って きっと、 三途の川を渡る前に追い返されちゃうよ」
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