風邪をひいた日

3/25
前へ
/25ページ
次へ
女の子だし、 きっとドレスくらい着たかったに違いない。 なのにゆずちゃんは文句も、泣き言もいわない。 ただ、 自殺した子に自分の境遇を重ねてみてしまった、 あの一度だけ。 あの一度だけしか、 籍を入れてから弱音を吐いてない。 だから、反対に少し心配。 「……おはよう」   洗顔をすませるために一階に降りると、 すでに起きていたゆずちゃんが顔を曇らせた。 「おはよう。なつにぃ、どうしたの?」 「たぶん風邪だと思うんだけど。 あとで薬、ちょうだいね」 「……ちょっときて」   洗面所に向かおうとすると、 袖を引っ張られて、ソファーに座らされた。 「熱は……ないみたい?」   そういと、自分のおでこを 僕のおでこにくっつけてきた。 ……やばいって!反対に、熱が出るよ!
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

479人が本棚に入れています
本棚に追加