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若先生があたまを撫でると、
ゆずちゃんがほんの少しだけ、
息を吐き出した。
「ゆずちゃんはどうなんですか?」
「ああ。
夏生くんは夕葵ちゃんのことが心配か。
大丈夫。
夏生くんがよくなれば、
夕葵ちゃんも元気になるから」
「それってどういう……?」
「とにかく早く風邪を治して、
夕葵ちゃんを安心させてあげなさい」
「……はい」
合点がいかなかったけど。
診察室を追い出された。
会計を待っている間も、
ゆずちゃんは不安そうに僕の手を握ってる。
あたまを撫でてあげても、
表情は固まったままだ。
会計をすませ、薬をもらって病院をでても、
ゆずちゃんは僕の手を離さない。
いつもなら、
「誰かにみられたらどうするの!」って、
手を繋ごうとすると怒るのに。
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