第1章

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「昨日の忘年会、ミユキさんも来てくれたら良かったのに。 ミユキさんがいなかったから、リューマお酒を飲まなかったの」 里奈さんはリューマの差し入れを受け取りながら、笑顔でお礼を言うと、そう言葉を続けた。 「そうそう、飲ませようとしても頑なに拒否ってさ。奥さんに償いだとかなんとか言っちゃって」 モデルのナオトさんがリューマの首に腕を絡めて、リューマの脇腹をグリグリした。 「リューマなんか悪い事したの?」 ナオトさんがニヤニヤしながらリューマを見る。 「してないけど、うちの嫁さんが勘違いして………」 リューマが じとっと私を見た。 “勘違い“という言い回しにカチンときた私は思わず 「勘違いではなくリューマが浮気したんです」 とリューマを睨んで言ってしまった。 自粛してお酒を飲まなかったのは偉いけど、 自分の過ちを私の勘違いにされるのは癪にさわる。 「えー、浮気? リューマさんダメじゃん。まだ結婚して間もないのに」 ナオトさんが面白そうにリューマを冷やかした。 「きっとリューマの軽はずみが誤解を招いたんじゃないの?」 里奈さんは溜め息をつきながら困ったように笑った。 「軽はずみってゆうか、酒に呑まれてしまって、ちょっと、ね」 リューマは言葉を濁しながら、ナオトさんの腕をほどく。 「あー、もう、朝からこんな話はやめやめ! オレたちは、なんだかんだで ちゃんと愛し合っているのでご心配なくー」 リューマが私の顔を引き寄せてオデコに軽くキスをした。 一瞬の出来事でパチクリしていると、 里奈さんとバチッと目が合い、 顔を赤らめた私を 一瞬険しい顔で見て目を逸らした。 え………。 里奈さんに今ヤキモチを妬かれたような……… でも気のせいだったのか、 リューマの差し入れのドーナッツの箱を開けて 「リューマからの差し入れ、みんな食べてね」 と笑顔を振りまいていた。 里奈さんは、本当に美人で素敵な女性。 8頭身のモデル達に囲まれていても全然引けをとらない。 「ほれ ミユキの分」 ぼーっと里奈さんに見惚れていたら ドーナツを掴んだリューマの手が私の視界を遮った。 「ありがとう」 みんながドーナツを食べながら、昨日の忘年会の話で盛り上がっていて、仕事モードになっていかない。 私はポツンと少し離れた場所で スタイル抜群の美男子たちの談笑を眺めていた。
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