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「ミユキさんは、腕のいい美容師さんなんだってね。」
いつの間にかナオトさんが隣に立っていて、話しかけてきた。
身長が180cmはあるような長身で
ワイルドな美貌が、男のフェロモンを感じさせて、無意味にドキドキと心臓を高鳴らせる。
「リューマが他のヘアスタイリストは嫌だっていうから、特別、ミユキさんが専属になったみたいで。
ルイだった時からヘアメイクの専属やっていてそれが結婚する馴れ初めになったんでしょう?」
ナオトさんは、手に持っていたドーナツを口の中に押し込んでモグモグさせた。
「はい。私がすごくリューマの事が好きで自分から売り込んだんですよ。」
「ふぅん、一途だね。 なかなかない展開のラブストーリーだね。
リューマ見てると結婚したくなるよ。
幸せそうだから」
「幸せそうですか? 手強い妻だって、私の事愚痴ってません?」
「はは。手強いくらいの奥さん方がリューマには合ってるよね。
なんてったって、チャラいから、彼は。」
ナオトさんの
鼻で笑ったような仕草に少し嫌悪感を感じて、目を逸らした。
「見た目もやる事もチャラいですけど、ああみえて真っ直ぐ愛してくれる人なんです」
「はは。ごちそうさま。昨夜はリューマと愛を確かめ合ったのかな?
昨夜、リューマはさっさと帰るしさ。
既婚者になるとめっきり付き合い悪くなるよね。
リューマはあんな風に人懐っこくて好かれるヤツだからみんな寂しく思ってるんだよ」
そんな言い方されると、
私が責められてるみたいでイヤだな………。
「特にーーーーーー里奈はね。」
ナオトさんが私の耳元に唇を寄せて
小さい声で囁いた。
ナオトさんの意味深な言い方に
私の心臓がドキリと嫌な音を立てる。
きっと、里奈さんはリューマの事が好き。
さっきの嫉妬されたような気がしたのは
気のせいじゃないんだ………。
私のライバルは至るところにいる。
朝はあんなに清々しい気持ちだったのに
まだ少しずつ淀んでいく。
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