26人が本棚に入れています
本棚に追加
今は入り込む隙間はないけど、
いつか、奪える日が来たら
奪ってやるから。
リューマ、覚悟しておけよ。
「もう言いたいことは吐き出した?」
「うん、なんだか、本当にゴメン。ご飯誘ってもらって良かった!もうそろそろ帰ろう?」
ミユキは自分だけスッキリした顔して帰る事を促してきた。
「リューマにはもちろんオレとご飯食べてる事言ってないだろ?」
ミユキを待ち伏せして、不意打ちだったし、急だったし。
「え? リューマにはメールしておいたよ。心配するから。」
ガクッ。
コントみたいに肘がテーブルから外れて体が傾いた。
「?」
ミユキ、こんな天然だったっけ?
「わざわざ言う方が心配かけると思うけど」
「そうかな? 隠されてる方がイヤでしょ」
「んー、まぁ、ミユキがそう言うなら?」
あー、また面倒くさい事になんなきゃいいけどさ。
ミユキは思った以上にリューマがヤキモチ妬きだって分かっていないらしい。
オレたちはお会計を済ませて、駅まで来ると改札で別れた。
ミユキと仕事上一緒にやっていく事考えたら
今は二人を掻き乱せない。
オレには不利な事ばかりだから………。
今はとりあえず
ミユキにN店に戻ってきてもらえればいい。
ミユキはオレに甘えてるって言うけど
オレの方がもっとミユキに甘えてる。
店長の立場で、情けない。
『なんで、美容師なろうと思ったの?』
N店に入ってきたばかりのアシスタントのミユキに訊いた。
『私、俳優の本橋ルイさんの専属ヘアスタイリストなりたいんです』
ミユキはマジメな顔してそう言った。
ミーハーだなって内心苦笑いしたのを今でも覚えてる。
でも今思えば
リューマがいたからミユキとオレが出逢えたのも事実だから
リューマには感謝しなきゃいけないのかもな。
最初のコメントを投稿しよう!