第1章

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「なんで急にヨシとご飯食べる事になってんの?」 ヨシと別れたのは11時前。 自宅マンションに帰り着いたのは その20分後。 リューマは表参道で忘年会だったから もう少し遅く帰ってくると思ったのに 玄関の扉を開けたらリューマの靴を見つけて驚いた。 ダイニングキッチンのテーブルに腰かけて、腕組みして私を睨み上げる。 最近カットしたリューマの前髪はスッキリと目元を浮き彫りにしていて 綺麗な透けた瞳で私を探るように睨んでいる。 ダンイニングチェアに腰を浅くして座り 長い足は投げ出すよう組まれていた。 身体全体で不機嫌オーラを放ってきて 私は怯んでリューマを見た。 「座って」 目の前のイスに座るように顎で促される。 リューマ、怒っている………。 忘年会だったハズなのに、リューマはアルコールを摂取してないようだった。 「リューマ、忘年会行かなかったの?」 「オレの事はいいから座って」 「…………」 怒気を含んだ声で、顎で示唆されて、次第に心臓がドキドキと嫌な脈を打ち始める。 やっぱり、ヨシとご飯食べたのはまずかったのかな? でも……… 「なんで、急にヨシとご飯行く事になったの?」 「話がしたいからってJ店まで来てくれて」 私、別に何も後ろめたい事なんてしてないんだから、ビビる必要も、取り繕う必要も何もない。 「話って何?」 リューマが詰問をし始める。 「N店に戻ってきて欲しいって」 私が目を逸らさずリューマを見据えてそう告げると リューマは眉根を寄せて明らかにイラっとした表情を見せた。 「ヨシ、まだそんな事言ってんのかよ」 「私も相川さんも抜けちゃうからヨシ大変なんだよ。私、戻ってあげたいと思ってる」 ヨシは職場で一番大切な人だから。 私をずっと見守ってきてくれた人だから 助けてあげたいんだよ。 「ダメ。却下」 リューマの口から冷たくいい放たれた。 聞く耳ないようなリューマに、苛立ちを、覚える。 リューマは最近仕事を一人で管理して、忙しさでストレスが溜まっているようだった。 それできっとすぐに不機嫌になってるんだ。 「これは仕事のことなんだから。リューマに指図されない! だいたい、リューマだって事務所に入るって言って入らないでいるでしょ?!」
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