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すぐさま助けてあげよう。勇者の誇りにかかて。ズザ。』
ミミリハ先生は、とても勇敢な言葉で砂の中から、
ゆるりのっそり、出て来ました。
「おはようございます。ミミリハ先生。」
『ほほう。いつぞやの。遠い昨日の昼頃にあった少女か。
コノノとう名だったかな。何か助けが必要か。この鋏で
敵を蹴散らして進ぜようか、この勇者ミミリハがな。』
「えっと、先生のハサミは立派ですけど、目の前の海を
断ち切って、先へ進む森にすることは出来ますか?」
『む。やってみよう。』
スカ。スカ。カチン。カチン。スカ。
『この海は勇者のハサミよりも大きいようだ。今は、
諦めるのがいいだろう。来た道を戻りなさい。』
「ミミリハ先生。コノノの戻る道は、海のように、
青くて大きいあの空だけなんです。でもコノノは、
先へ進みたいので、森を抜けたいのです。」
『何故、先へ行くのか教えてくれるかな。
力になれればいいのだが。話してくれ。』
「コノノは十一回のお誕生日と、お母様がいれば
それにあと二回の冬を越えて、今年は数えるなら。
……ミミリハ先生?」
『なにかな?力になれるかな?』
「数えるって……何を何の為に数えるのですか?」
『それは簡単な質問だ。よく聴くがいいコノノ。
数える事は数を知る為に、数えるのだ。数の意味が
何であるかを知りたいなら、この砂浜の砂粒や、
海の手の平ですくった海水の数を数えるような事。』
「どういう事です?ミミリハ先生もお母様も、あと
森の樹や花も、今、競争中のイルカのトルトも、
大切な一つです。」
『世界の中心も世界の果ても、世界の始まりも一つ。
コノノ。お前さんも一人だ。勇者ミミリハは一つしか
何も知らない。その胸の燃える青い火も。』
「ここは……最初の海岸じゃない……?」
『そういうことだ。コノノは森を抜けたのだ。
誇らしく思おう。ヤシガニを先生と呼ぶ我が弟子よ。』
「この島は……何処へも繋がっていないの?
ここも、世界の果てなの?世界はいつ始まるの?」
コノノがなにかとても悲しい気持ちになりました。
世界がこんなに晴れていて、風は優しく吹いていて。
それでもコノノは、進む道が無い世界の果てで。
一人。夜中まで泣きました。
ミミリハ先生は、朝になってご飯を食べれば元気に
なってくれるだろうと、ヤシガニ仲間に命令しました。
森の鳥達は夜中は眠っています。
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