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「んっ……」
小さく身じろぎをして、いつもの暗い部屋で少女は目覚めた。
黒のTシャツに灰色のスウェット姿のままの自分を見て、徐々に意識がはっきりしてくる。
「……わたし、寝てたのか」
拍子抜けしたように小さくつぶやいてから、寝る前、手元にあったはずのゲーム機を探す。
ベッドに横たわっていた体を起こして、ベッドの端に腰かけたままきょろきょろと辺りを見渡すと、少し遠くの方に目的のものが転がっているのを見て、彼女は気だるげに腰を上げた。
転がっているゲーム機を見下ろしてから、少し妙な気分で腰をかがめてそれを拾う。
「……夢じゃ、なかった」
まるでガラス製の割れ物を触るような手つきで、スマートフォンそっくりのゲーム機の画面を指先で撫でながら、独り言ちる(ひとりごちる)。
カーテンから漏れる朝日に目を細め、少しだけ非日常的なことが起こった昨日を思い返し、少女はぽりぽりと頭を掻いた。
ふと思いたち、少女は試しにゲーム機の脇にある赤いボタンを長押しして、それを起動させてみた。
まるで、本当にすべてが夢だったのかどうかを確かめるように。
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