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「さ……佐倉、真夜(さくら、まよ)」
少女―――佐倉真夜は、震える声で恐る恐る名を名乗った。
不気味だし、怖いし、何が何だか全く把握できないけど、名前を名乗らない限りは先に進めない。
すると“グリムちゃん”は耳と思われる目の横のスペースにちょこんと尖った手を当てながら、ふんふんとうなずく仕草をした。
そのコミカルな動きに、少しだけ緊張がほぐれかけた矢先、
『うんうん、知ってるよ~!
よかったぁ、佐倉真夜ちゃんで間違いなかったね!
女の子、17歳。
西野谷高校三年一組、出席番号11番。
誕生日は8月5日で、家族構成は父、母、兄の四人家族。
ただいま登校拒否中の引きこもり!
だったよねぇ!』
「ひっ!!!」
ケラケラと奇妙に笑いながらそのキャラクターから漏れてきた自分自身の情報に、ぞわっと寒気がして、真夜は喉をひきつらせて叫んだ。
あまりの不気味さに本体から両手を離してベットの方へあとずさる。
と同時に、ガタンっと派手な音を立ててゲーム機が地面へと落ちてしまった。
そのままベットの縁につまずいた真夜は、ボスッと音を立ててベッドの上へと尻餅をついた。
『いったぁーい!落とさないでよね!!
殺しちゃうぞぉ~!!』
「な、なな……なんで、」
場違いなほど明るい声がゲーム機から漏れるのを、真夜は幽霊でも見たかのようなまなざしで見つめる。
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