第2章

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耳やしっぽの動かし方もだんだん分かってきた。 俯いたまま、耳やしっぽをピクピクと動かしてみる。 「……………………………。」 ワシっ。 「ふぎゃあっ!!!??」 いきなりしっぽを鷲掴みにされ、その慣れない感覚がぞわっと脊髄を走った。 「ん、感度はかなり良好だな。 手や足とさほど変わらないか。」 「いっ、いきなり何するの!?」 「何って、ここは俺の研究室だぞ?? 実験に決まってるだろう。」 またあの人間離れした怪物の冷笑で、有栖川は僕に一歩近づいた。 この顔は、怖い。 頬をあげ口を歪ませ、笑っているように見える、この表情。 さっきの普通に会話できた雰囲気と変わらないのに、恐怖が僕にまとわりついてくる。 違う。 怖いのは、この人の目が僕を同じ人間として見ていないからだ。 まるで実験動物のモルモットを見るような、一切の慈悲がない目に顔を青くした僕が映る。 「い、嫌だ!!!! ただでさえ、有栖川くんのせいでこんな姿になったんじゃないか!!!! これ以上、実験に付き合いたくない!!!!」 そう叫んで僕は近付いてくる彼から逃げるように後ずさった。 「飲ませたのは俺じゃない。 けれど、経緯はどうであれ格好の被検体が目の前にいるんだ。 手を出さない訳がないだろう。」 有栖川はゆっくり歩いてくるのに、身長が高いからか一歩一歩が大きくそれが余計に僕を恐怖に追い上げる。 それでも。 無数の手に身体中を触られたときの気持ち悪さ。 薬を飲んだときの、息もできないほどの痛み。 人間の形状を成していない、化け物と言われてもおかしくない、今の自分の姿。 この上人体実験までされるなんて、冗談じゃない。
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