聖炉の女神

96/191
前へ
/416ページ
次へ
右肩の上に置くように構えた剣の刀身に赤い光が灯ると、俺は渾身の力を込めて腕を振り下ろす。 袈裟懸けに振り下ろした右腕の剣は、次の瞬間飛び込んできたテレウスの嘴と甲高い金属音を響かせ、辺りにオレンジ色の火花を撒き散らす。 「ディエゴ!頼む!」 「おうよ!」 剣とテレウスの嘴が一瞬拮抗すると、俺は後ろに控えたディエゴを呼ぶ。 すると間髪を入れずにいらえがあり、野太い声が聞こえると同時にスキルをキャンセルし、スキルの慣性を生かして右前方に転がる。 前転で大鷲の攻撃から逃れた直後俺の時よりも明らかに大きい衝突音が響き、体勢を立て直して音の方へと顔を向けると、そこには俺と入れ替わるようにして前に出たディエゴが両腕でしっかりと握った戦斧を振り下ろし、斧の刃部をテレウスの脳天に叩きつけていた。 「今だ!楽園隊!全力攻撃(フルアタック)!」 「ライト、ディエゴ!一旦下がれ!俺とマルティウスと交代だ!」 ディエゴの放ったスキル≪プランブ≫による衝撃波を彼の背後に付くことでやり過ごしていると、次いでそんなキースの声と共に複数のプレイヤーの雄叫びが耳に届き、色とりどりの光を纏ったプレイヤー達の武器が行動停止(スタン)したテレウスに殺到する。 ガリガリと削られていく大鷲のHPバーを眺めていると、少し離れた場所からアルマダとマルティウスが駆け寄ってきて、俺たちに戦線からの離脱を命じる。 「純タンクなら二人でどうにか受けられるみたいだ。二人とも両手武器なら俺たちより楽かも知れん」 「そうか、それだけでも分かれば僥倖だ。二人はとりあえず次のローテまで待機だ。スキルの冷却なり回復なりしててくれ」 「そうするよ。単発スキルは受け用に常に使えるようにしておきたいしな……」
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11352人が本棚に入れています
本棚に追加