聖炉の女神

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「おうライト、すまんな休憩中のところ」 「いや、今のは仕方ない。今ので誰か重傷者は出たか?」 「ああ、そのことなら心配はいらん。今のにはダメージ判定は無かったみたいだからな。もっとも、誰かさんがぶん投げた奴らに関しては知らんが」 「そうか、なら一安心だな」 モックルの次に二人の転倒したプレイヤーを救出もとい放り投げた後、そのままの足でディエゴと共に前線に戻ると、壁の後ろで防御部隊に指示を出しているアルマダが声をかけてきたので、それに応じる。 今の転倒での被害について尋ね、皮肉交じりの返答に目を逸らしながら頷くと、二人から湿り気を帯びた視線を向けられた。 「だけどどうする?攻撃隊が崩れたし、持ち直すまで俺が入ろうか?」 「そうだな……壁は足りてるし、持ち直すまでと言わずそのまま攻撃に移ってくれるか?受けるのはともかく、飛んでるヤツに攻撃を当てるのはAGI不足の俺たちには少しばかり骨だ」 「了解。確かにこう飛び回られたらスキルも当てられないしな」 二人から照射される視線から目を逸らしながら提案すると、僅かに考えを巡らせてからアルマダは俺に攻撃への異動を命じる。 「提督、この際こいつのグングニルで一気にヤツの残りHPを消し飛ばしてしまうのはどうです?ライトも、後でメンテさえすれば二発は使えるんだろ?」 「え?あ、ああ。MPも今のところは結構残ってるし、使うのは問題ないけど……」 唐突にディエゴに話を振られ、戸惑いながらも答える。 視界上部のMPバーの横に表示される数値を横目で見ると、単発系のスキルばかり使っていた為かMPは思いの外残量に余裕があり、ほぼフルに近い量が残っていた。 俺の現在のMP総量は1万3千と少しなので、今のテレウスのHP残量でもディエゴの言うようにグングニルの特殊効果を二回立て続けに使い、ゼロにしてしまうのは十分可能だ。 どうする?という意味でディエゴの言葉の後から何やら唸りながら考えているアルマダに視線を送ると、禿頭の巨漢は閉じていた目蓋をゆっくり開き、かぶりを振った。
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