準備

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「激励会って言ってもなぁ……三ギルドの親睦会みたいなものだろ?俺達が行っても……」 「まあまあ、一応私達も攻略には参加するんだし、アルマダさん達はともかくキース達とはあんまり顔を合わせないんだから、たまにはそういう場も必要だと思うよ」 「そんなもんか……?」 そもそも親睦が必要なのは剣闘士達だと思うが、まあ俺達もーーというより俺がーーボス戦にひょっこり現れては散々かき回して去っていくという台風のような行為で少なからず迷惑をかけているだろうし、せめて挨拶くらいはしておいた方がいいのかもしれない。 それに現在攻略中のエリアに入ってからは俺達はあまり前線には顔を出さずに気ままに過ごすという不良生徒な生活を送っていたので、前線の攻略に邁進している三ギルドの面々とはこの間の会議以来顔を合わせていない。 前線組はすでに昨日まで俺達がクエストを受けていた主街区近辺の村や街をパスし、とっくに次の街に入っている。 俺達も主街区近辺のキークエストを一通りクリアするというキャンペーンクエストはクリアして次の街への通行手形も取得しているが、明日からもう箱庭の攻略に入ることになるし、一先ず地上の攻略は打ち止めだろう。 キース達も攻略の情報を無償で公開して後は他のプレイヤーに任せるとのこと。 「フィールドの攻略はガリム達が引き継いでくれるみたいだし、安心といえば安心だけどな……」 「そうだね、それに三帝のうち二つのギルドが抜けるわけだから元の剣闘士みたいな上層のギルドも堂々と攻略に参加出来る訳だし」 それに関しては抑止力が居なくなったせいで攻略に際してのいざこざが起こらないか不安だが、まあガリム達が上手くやってくれるだろう。 安心と不安が混ざった微妙な気持ちを溜息と共に吐き出し、二人で歩く最後の交差点に差し掛かる。 「あ、じゃあ私はここまでだね。また後でね」 「ああ、また後で」 そして交差点を直進していくという輝宮と手を振りあいながら別れ…… 「ああ、そうだ」 「うん?」 る前に純白の背中を呼び止める。 呼び止められた輝宮は足を止めて振り向き、小首を傾げた。 「いや……結局さ、苗字と名前どっちで呼べばいいのかなって」 電車の中でダメと言われた記憶を掘り起こし、苦笑混じりに問いかけると輝宮は一瞬きょとんとしてから噴き出すように笑い、俺の耳に「美月!」という声が届いた。
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