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「瑤子さん……」
尚斗が瑤子を名前で呼ぶようになったのは、つい最近のことだ。
「なんか、オレに隠してる?」
そのひとことに、手にした食器がガチャンと音を立てた。
思わず、動揺してしまった。
「……そんな風に、見える?」
手を止めて、尚斗を見返す。
心のうちを見透かすような純真な瞳が、こちらを見ている。
瑤子は、その瞳から逃れるように、目を伏せた。
(言ってしまおうか……)
自身に問いかける。
少なくとも今回の件は、尚斗に黙っておくというのは、心苦しい。
これ以上、彼に対して隠しごとを増やしたくなかった。
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