第1章

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「はい、お弁当」 「えっ…?」 家を出ようとローファーを履いたとき、ゆうとくんが話しかけて来た。手にはお弁当が一つ、握り締められている。 「今日から作る事にしたから、お弁当」 「…そんな負担かかることしなくていいよ。お昼は自分で買うから」 「作った方が安いんだよ。お弁当って」 はい、と、彼は強引に僕の手にお弁当が入った袋を握らせた。 「…本当に、平気なの?」 「ははっ、一つも二つも変わんないって。大丈夫」 「…ありがとう」 「いいえ。行ってらっしゃい」 彼が手を振ったことに頷いて、僕は家を出た。お弁当なんて初めてで、本当はとても嬉しかった。…照れくさくて笑えなかったけど。
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