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「皆気をつけて帰れよ」
いつも言われてる筈なのに、今日はその言葉が一段と重く感じた。
「じゃあね、眼帯くん」
ぽんぽんと肩を叩かれ、手を振る友達に手を振りかえし、俺もすぐに教室から出た。
早く、早く。
「ただいまっ…」
踵を踏んで靴を脱ぎ、鞄は自室のソファーへ投げ捨てるように置いた。パタパタと音を鳴らしながら、急いでゆうりくんの部屋のドアをノックする。
「ゆうりくん…?」
「…おぇっ…」
その音に慌ててドアを開けると、彼は床に座り込んで、バケツに顔を埋めていた。
「ゆうりくんっ…!」
ぜぇぜぇと、苦しそうな息と激しく上下に揺れる背中。その背中をさすると、汗でじっとりと濡れていた。
「…きょうは、はぁっはぁっ…はやい…んだね…」
「うん…」
空気を良くしようと、締め切った窓を半分開ける。
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