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ゆうりside
目が覚めた。ベッドに横になっていた。僕はいつ眠ったんだろう。
身体を起こすと、ベッド横には綺麗になったバケツが置かれていた。ゆうとくんが洗ってくれたんだ。
ふわりとまたあの時の香りがして、僕はすぐに窓を開けた。
「ニャー」
ベランダに、真っ白な猫が一匹寝転がっていた。
「…君は僕を怖がらない…?」
ベランダに腰かけ、そっと猫の口元に指先を伸ばすと、クンクンと匂いを嗅いだ猫は一度身体を僕の服に擦らせてから、膝の上に乗って丸くなった。
「…優しいんだね…君は…」
優しく身体を撫でると、猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
また涙が零れた。猫に当たらないように、フードを深く深く目元が隠れるくらいまで被る。
「…自分が…こわい…」
本当にあの時、自分が自分じゃないみたいだった。自分の目なのに、言うことを聞かなかった。
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