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「この、ろくでなし!」
こう言われて、気分のいい訳はないだろう。
『ろくでなし』は『陸でなし』と書くらしい。
陸は、平地や水平を示し、きちんとしている事、まともな事を意味していると。
まともでない、きちんとして無い者を『ろくでなし』と一言で言う。
「この、ろくでなし!」
近所からそう言われていた、若者。
昼はぶらぶら。夜は、車庫で仲間と騒いでいた。
毎晩、毎晩、騒いでいた。
住民も迷惑してた。
「ろくでなしが!」「あそこの、息子はろくでもない!」
誰もがそう口にし、当然の様に両親は近所の住民から村八分状態で、肩身の狭い暮らしをしていた。
ある日。騒音が消えた。
数ヵ月後。
テレビで若者達が、
ヒット曲を唄っていた。
だれもが手の平を返した。
「良い若者だった」
『ろくでなし』は、誰なのか。
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