第1章

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「この、ろくでなし!」 こう言われて、気分のいい訳はないだろう。 『ろくでなし』は『陸でなし』と書くらしい。 陸は、平地や水平を示し、きちんとしている事、まともな事を意味していると。 まともでない、きちんとして無い者を『ろくでなし』と一言で言う。 「この、ろくでなし!」 近所からそう言われていた、若者。 昼はぶらぶら。夜は、車庫で仲間と騒いでいた。 毎晩、毎晩、騒いでいた。 住民も迷惑してた。 「ろくでなしが!」「あそこの、息子はろくでもない!」 誰もがそう口にし、当然の様に両親は近所の住民から村八分状態で、肩身の狭い暮らしをしていた。 ある日。騒音が消えた。 数ヵ月後。 テレビで若者達が、 ヒット曲を唄っていた。 だれもが手の平を返した。 「良い若者だった」 『ろくでなし』は、誰なのか。
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