第1章

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 その声は誰もが聴いた。そう教えてくれたよね。 だけど誰もが自分の悲鳴で、叫んだのは覚えているけど、 火の声を掻き消してしまったんだって。                *  火はいかなくちゃいけないって、とても言い難そうに とても辛そうに星に言う事になったの。  それは「こんにちは。」よりも、とても難しい事で、 火は宇宙へ飛び立つ前に、小さな小枝を探してきてから、 自分を半分、燃やしてみた。  でも、わずかな時間で小枝は燃え尽きてしまったの。 だから燃え尽きないモノを探した。それがあの、わずかな。                *  水晶硝子。カラスと硝子は高く飛ぶね。しかも強い。 それに守ってもらって、火は燃え尽きない水晶に住み着いた。  この世界の果て。で。どこまで。                *  この世界の果てで。火はいつか自分を永遠に燃える自分を わずかの間、一緒にいてくれる何かを守ろうと決めたの。  これが世界で始めて起こった出来事。多分、決意って呼ぶ。 世界の果てに、どうやって最初の何かが来たのか知らない。  知らないの? ―― だって私はもう永遠に火に埋もれたから。  僕もわずかな力を使い果たしたから。 ―― そうだね。  そうかもしれない。                *  世界が明るくある時、暗くある時、火は灯りますように。  私は、この小さな水晶の中にある火を、【イデア】と呼ぶ。 【イデア】と呼ぶ。  貴女のことを、そう呼ぶ。  君のことを、こう呼ぶよ。 君のことを、こう呼ぶよ。 またね。
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