ひょっとこ

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やめないどころか、ギシギシと木製の床をハンマーで叩き壊しそうなほどの足踏みと、めちゃくちゃに腕を振り回しながらこちらに近寄ってくる。 その動きはまるで、糸に繋がれた人形をめちゃくちゃに動かしているようで、不規則な動きを永遠と繰り返しながらも踊り続け、次第にヒューヒューと息苦しそうな呼吸音と、ぼそぼそと何かをつぶやく声が聞こえてきて、僕らもいい加減にしてほしくなり始め、ぼそぼそとした声が聞こえた。 「………………………………って」 ガタンッ、メシッ、バキッ、手足の動きが先輩の声を邪魔するように大きくななっていき、ヒューヒューと不快な呼吸音もさらに大きくなる。さすがにおかしいと気がついた僕らは先輩に駆け寄っていき、ぼそぼそとした声を聞いた。 「取って、これを取って……」 先輩はそれを言い続けていたのだ。がむしゃらに動かしてながら先輩は言う。取って、このお面を取ってと、異常事態だと思った僕らは数人がかりで先輩を押さえつけ、顔にかぶったひょっとこのお面を取ろうとするけれど、どんなに引っ張ってもお面は取れないどころか、先輩が痛い痛いと泣き叫び、バタバタと手足をばたつかせ、ものすごい力で跳ね飛ばそうとする。 僕は先輩の顔に張り付いたひょっとこの面に手をかける、ちょうど耳のあたりだ、真正面から向き合って悲鳴を上げそうになりがらも僕は強引に先輩からひょっことのお面を引き剥がした。 メシャッ………………音がして、先輩が顔を抑えてのたうち回る。僕の手にあるひょっことのお面には先輩の頬の肉がべったりと張り付いていた。頬の肉を剥がされた先輩からは歯茎や歯が見え隠れしており、あふれ出す血が勢いよくひろがっていく。 僕らは悲鳴をあげながら、ひょっとこのお面を投げ捨てて、先輩を担いでお寺を出て近くの小さな病院にかつぎ込んだ。 病院の先生は、いきなり入ってきた僕らに驚いていたけれど、先輩の惨状を見るとすぐに処置に入ったが、ここは小さな個人経営の病院だ。頬の肉がごっそり無くなった先輩を治療できるほどの設備はない。先生はすぐに別の大きな病院に応援を頼み、救急車を呼んだ。その間も止血したりと忙しい先生の手伝いをして、救急車が到着し、先輩を搬送していく、救急隊の人達も先輩の顔を見て、思わずギョッと目を見開いていたけれど、すぐに仕事に移る。先輩を担架に乗せるて救急車に運び込みあっという間にいなくなった。
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