ひょっとこ

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後始末を終えた先生が、僕らを集めて事情を聞くと、全員に一発ずつ拳骨を振り下ろして事情を説明してくれた。 「あそこに置かれているお面はな、祟られているんだよ。その昔、ある男か家事で顔に大きな火傷をおった、男は自分の顔にたいそう自信をもっていたからショックを深かったんだろう。いつからか男はひょっとこのお面を被って、あちこち徘徊するようになった。まぁ、そうなれば薄気味悪いわな、なにより、道行く人とすれ違いにお面をとって火傷の顔を見せるんだ。気持ちはわからんでもなかったが、正直、迷惑だったが、男は聞く耳を持たなかったどころか、さらに酷くなっていったんだ。自分の顔はこんなに醜いのに、おまえらにはその気持ちはわからんだろうってな、で、最後はあの寺で首を吊って死んでしまったかというわけだな、それだけなら自殺ってことで終わりもできたんだがなぁ」 と先生は昔を懐かしむように言った。直接は聞かなかったけれど、もしかしたら火傷をおった男を治療したのは先生だったのかもしれない。 「毎夜、その寺の近くでひょっとこの面をした男が現れるようになった。めちゃくちゃな踊りをしながら言うんだと、『お前の顔には火傷があるか? 俺の顔には火傷があるぞ。焼けただれた火傷があるぞ。お前の顔はどうなんだ』ってな、これには困ったんで、有名な霊能者を呼んで供養しようとしたんだけれど、どんなに祓っても男は現れた。困り果てた霊能者は、男が残したひょっとこのお面を寺の中に納めたらしい」 単純な話が、それを納めたとたん、男は現れなくなったそうだが、まだ、この話には続きがある。 「けれど、皆が皆、それを信じたわけじゃないんだ。話を信じなかった男がいてな、試しにひょっとこのお面を被った」 結果はお前たちが見てきた通り、男にひょっとこのお面が張り付いてめちゃくちゃな踊りしながら首を掻ききり絶命したという、その後、お面はひとりでに外れ男の顔は目も鼻も口も、眉毛までもがしっちゃかめっちゃかの位置になっていたとう。その話を聞いて、僕らは心底、震え上がった。特に僕はお面に張り付いていた先輩のほほの肉の感触を思い出してしまいゲーゲー吐いた。 先輩は皮膚の移植をうけるなければならないほどの大怪我で何度も手術と整形を繰り返し、この一件以来、片時もマスクを外さない人になってしまい、性格も内向的になってしまって僕らとも疎遠になった。
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