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III
キュっと上履きが擦れる音が響く。
もうすっかり陽は暮れて、暗闇が今日という日を埋め尽くす。
こんな時間に学校にいるリトルトラベラーズとかいう変な組織だった連中は誰なのだろう。
学校ということで、思い当たるのは、琴吹か宇津ッ来くらいだ。冬杜はないだろう。
というかあってほしくない。
そんな地雑な推理に頭を使いつつ、言われるがままに来たのは生徒会室。
おいおい、矢印に従ってきてみればここかよ。
まさか一度も話したことない生徒会役員共だとは思いもしなかった。
『背徳露出プレイを楽しむ』発言の生徒会長だとか、いないよな?
意を決して。
でもけっして望んでいるわけではない扉を開ける。
そこで誰かに歓迎されるわけでもない。
1人の女子生徒がそこには立っていて。
「あれ?色葉?」
「空詩先輩こんばんは。待ってましたよ、待ちすぎて凍えるかと思いました」
制服を程よく着崩して、スカートは短め。
ショートボブの髪の毛で、たぶん知人中では1番、高校生をしている。
「なにもしませんよ空詩先輩。相変わらず物憂いげな雰囲気ですね」
「もしかしてリトルトラベラーズ?」
こうして普通に会話に組み込むとおかしいな。
「そうですよ。なんで生徒会室かは謎ですけどね」
ニコリとはにかむ姿はとても可愛らしい。
けれど、その表情は痛いほど知っている、というか知ってしまっている。宣言されてしまっている。
「あたしとこうして二人きりなのはここち先輩が気が気でないはずだから、校庭にでも行きましょうか空詩先輩?」
「あ、あぁ──そうしてくれると助かるけれど」
「あはは、空詩先輩って本当──。」
聞き取れない。というか意図的に声なき声にした感じだった。
別に突っ込むことなく、校庭へと移動する。
部活は終了しているのか、誰もいない。
「さ、空詩先輩。あたしの役目はこれで終わりです。相談事もあったのですがやめときます」
役目はっや!?
クスクス笑う色葉はチラリと僕の後ろを覗く。
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