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そして固まる。僕は固まる。
目の前には、青みがかった黒髪が揺れる女の子。
睨んで睨んで、睨まれる。
本当にこの方、メデューサの末裔だろ、視線で人を殺しそうだ。
そして、睨んだままにゆっくりと口を開くと、抑揚が抑えられている声が僕を揺する。
「あら、祇園君なにをしていたのかしら?冬杜さんと二人きりで」
怒ってる。怒ってらっしゃる!!
「べ、べつに───
「私の冬杜さんに何をしていたのよ」
「そっちかよっ!!」
僕が、どうやったらこいつの機嫌なおせるかなぁ、このままじゃ機嫌直す前に危険だなぁ、なんて思ってたのが馬鹿みたいじゃないか。
「だって私の唯一の友達だもの。貴方なんかには渡さないわ」
「重い重い重ぉぉおお!!お前の友情感の質量が凄いことになっちゃてるから」
「仕方ないじゃない、感性が壊れていたんだから」
これで口でも窄めて、拗ねてくれていたら可愛いのに、目の前の奴はいたって真顔だ。
「お前の壊れてたのは慣性のほうだからな」
いや、まぁ。感性も死んでいたのには変わりないけれど、本元は慣性だ。
何ヶ月か前、慣性が強くなったり弱くなったりする才能に取り憑かれていたことがあったのが、この琴吹ここちさんである。
「思えば思うほど、感謝しているのよ。こう見えてもね」
今では少し笑えるようになった琴吹ここち。
コイツが〝感謝している〟そう思えていることに安堵する。
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