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その優しい記憶は不意に――
流れ込んだ蒼の下、温かな煌めきで再生された。
――リーザに身長抜かれるのだけは、いやだな。
飛竜を小型化することができる青年の特技。
弟を小さくできる力は、思えばそんな心が始まりだった。
……ぼた、ぼたと。
赤い獣の直下にいた青年は、ただ不思議そうに……。
抵抗しなかった青年を真っ赤に染める、赤い獣の血。数多の透明な杙に貫かれ、命を流す体を真っ白な頭で見つめた。
「……トラスティ……?」
青年は、自らが食われて終りで良かった。それなのに、茫然とこの現実……総身から血を流す赤い獣を撃った、最強の獣すら突き通す力。獣越しに、対岸の厳めしい力の主を見つめる。
「何で――……リーザを……」
全身に双子の血を浴びながら、赤まみれの青年はそれだけをやっと、無情な現実の中で口にする。
対岸では悪友がまさに、青年の衝撃を代弁するように、非情な国王に掴みかかっていた。
「国王サン!? アンタ――リーザを殺す気か!?」
「……」
「元はと言えばそこの弟のせいやろ!!? これ以上おれらの大事なもんを壊す気やったら、おれはもう誰相手でも容赦せんからな!?」
声も出ない他の者達を横に、厳しい顔の国王は、掴みかかる悪友をまっすぐに睨み返した。
「……馬鹿者が。もうとっくにあの男は、事切れている」
その赤い変貌の真実と、確かに死体だった青年が動けている理由に、悪友達は気付いていない。それを幸せな者だと、断罪するように言う。
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