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「へぇ~。貴女は王妃様の妹さんなんですねぇ」
「今頃知ったのかよ! もう出会って何年目になるんだバカ!」
鞭の似合う野性的な女が、「王属」になったことを相方の剣士に伝え、初めに返った言葉がそれだった。
「いえね、ヒトは見かけによらないなぁ、と思いまして」
「悪かったなバカ。どーせアタシは、王妃なんて知り合いとは絶対思えないよーなガラッパチだよ、どーせどーせ」
子供っぽい顔で拗ねる女が、一見ガサツな姿を心底気にしていることを、剣士は随分前から知っている。
対して剣士は、生まれながらの教会所属者であり、中身はどうあれ表の顔は柔和にできる。気にしいのくせに飾らない女の素朴さが不思議でならない。
「それでどうします? 私との宝探しは潮時でしょうかね?」
「……いや……。アンタさえいいなら……アンタも『王属』、やらないかと思って……あのバカ国王、正直いい奴だし……」
「え?」
ごにょごにょと言い澱み、女が両手をもじもじと遊ばせる。
「何ですって? 私がいないとそんなに寂しいですって?」
「――って誰が!! あ、で、でも別に、いてくれて悪い事はないんだよ本当に!?」
えー、どーしましょうーと剣士は笑い、わたわたと女は慌てる。
そんな剣士も、剣を抜かせてしまえば凛と言うのだった。
「この命全て――貴様と、貴様が信じた王にくれてやろう」
-了-
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