⑥祭祀と獣使い

2/2
前へ
/370ページ
次へ
「へぇ~。貴女は王妃様の妹さんなんですねぇ」 「今頃知ったのかよ! もう出会って何年目になるんだバカ!」  鞭の似合う野性的な女が、「王属」になったことを相方の剣士に伝え、初めに返った言葉がそれだった。 「いえね、ヒトは見かけによらないなぁ、と思いまして」 「悪かったなバカ。どーせアタシは、王妃なんて知り合いとは絶対思えないよーなガラッパチだよ、どーせどーせ」  子供っぽい顔で拗ねる女が、一見ガサツな姿を心底気にしていることを、剣士は随分前から知っている。  対して剣士は、生まれながらの教会所属者であり、中身はどうあれ表の顔は柔和にできる。気にしいのくせに飾らない女の素朴さが不思議でならない。 「それでどうします? 私との宝探しは潮時でしょうかね?」 「……いや……。アンタさえいいなら……アンタも『王属』、やらないかと思って……あのバカ国王、正直いい奴だし……」 「え?」  ごにょごにょと言い澱み、女が両手をもじもじと遊ばせる。 「何ですって? 私がいないとそんなに寂しいですって?」 「――って誰が!! あ、で、でも別に、いてくれて悪い事はないんだよ本当に!?」  えー、どーしましょうーと剣士は笑い、わたわたと女は慌てる。  そんな剣士も、剣を抜かせてしまえば凛と言うのだった。 「この命全て――貴様と、貴様が信じた王にくれてやろう」 -了-
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加