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それは本当に、青年にとって、衝動的としか言いようの無い告白だった。
「……へ?」
ポカンと目を丸くし、鈍い女が、足首までつかった泉で立ち尽くす。
わけがわからない。といった感じで青年を見つめてくるので、青年はある意味、不思議な覚悟が決まった。
「――だから。オレはあんたがほしい」
「……え?」
「何でもしてくれるなら、あんたをくれ。オレはあんたと……共に生きたい」
「え……って、それって……」
曇り無き眼差しと言葉に、女はようやく、何が起きているかを悟る。
水上で体をばっと竦め、最大レベルで慌て始めた。
動揺した女はばしゃばしゃと、泉の中へと大きく後ずさる。
「そ――そーいうことじゃなくてっ、いやなくないけど違うの、リーザ絶対何か誤解してるっていうか何ていうか!!」
もたれた木から泉の方に青年は向き直る。女がよく見えるように、虚勢で顔を上げながら、ふんぞり返るように水際まで行った。
「嫌ならそれだけ言えよ。アニキが気になるならオレも考える」
「違うのそれ絶対誤解、っていうか何それ何処からそんな話になってたの、ええぇぇっっ!!?」
慌て過ぎて全身を硬直させ、女はひたすら真っ赤になっている。
青年は思わず顔が綻び、女が落ち着くまで、黙って待とうと思えるくらいになった。
この青白い月夜に、青年を後押ししたのはひとえに、双子の兄から抜け駆けできるなら今、という思いだ。
そうして、本当に欲しいものは兄に気兼ねせずに手に入れてきた。だから兄とも、上手くやって来れたのかもしれない。
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