⑧英雄ライザ

1/3
前へ
/370ページ
次へ

⑧英雄ライザ

 その連れ合いは本当に頑固だと、連れ合いと共に短い旅へと出る度に男は思った。 「だから、本当に……危ないから、俺の仕事についてこなくていいんだぞ? ミリア」 「嫌。危ないなら尚更、ライザ一人で行かせるなんて嫌だもの」  連れ合いと暮らし始めた頃は、男は体が本調子でなく、危なげな所が多々あった。しかしその後は、それまで以上に頑強な化け物となっている。 「俺を殺せる奴なんて、もうそうそういないよ」  今では却って、連れ合いに何かあったら、と嫌で気になるので、こうして仕事先に連れ歩くのは不本意でもあるのだった。 「大丈夫。わたしもわたしのことくらい守れるから」  水の力を司る宝の盾を、連れ合いは魔道の媒介としている。まさに鉄壁の守りを持つと考えて良く、それを貫ける相手はほとんどいないと男もわかってはいた。 「それに、こういう時しか二人にはなれないもの……期限さえなければ、もうずっと、お仕事してたっていいくらい」  彼らの家には常に、監視の名目による居候がいる。  連れ合いが難しい顔で見上げるのも無理がないことで、男も結局、二人旅という誘惑に負けて頷いてしまうのだった。  こうした二人旅は、連れ合いが身ごもるまでの間は何度となく続く。  危なげながらも大切な時間だったと、男は後に思い返す。 +++++
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加