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⑧英雄ライザ
その連れ合いは本当に頑固だと、連れ合いと共に短い旅へと出る度に男は思った。
「だから、本当に……危ないから、俺の仕事についてこなくていいんだぞ? ミリア」
「嫌。危ないなら尚更、ライザ一人で行かせるなんて嫌だもの」
連れ合いと暮らし始めた頃は、男は体が本調子でなく、危なげな所が多々あった。しかしその後は、それまで以上に頑強な化け物となっている。
「俺を殺せる奴なんて、もうそうそういないよ」
今では却って、連れ合いに何かあったら、と嫌で気になるので、こうして仕事先に連れ歩くのは不本意でもあるのだった。
「大丈夫。わたしもわたしのことくらい守れるから」
水の力を司る宝の盾を、連れ合いは魔道の媒介としている。まさに鉄壁の守りを持つと考えて良く、それを貫ける相手はほとんどいないと男もわかってはいた。
「それに、こういう時しか二人にはなれないもの……期限さえなければ、もうずっと、お仕事してたっていいくらい」
彼らの家には常に、監視の名目による居候がいる。
連れ合いが難しい顔で見上げるのも無理がないことで、男も結局、二人旅という誘惑に負けて頷いてしまうのだった。
こうした二人旅は、連れ合いが身ごもるまでの間は何度となく続く。
危なげながらも大切な時間だったと、男は後に思い返す。
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