⑦リーザとピア

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⑦リーザとピア

「あたし達の父さんは、竜と言われる化け物だった」  ある人間の女の素性を、女の数少ない友人だった「千里眼」から、飛竜の息子はザイン山上の第一峠で話されていた。  奇しくも同じ話を、ザインとゾレンの境に当たる中腹の山小屋で、その双子の弟である青年と人間の女は交わしていた。 「竜って……あの、竜かよ?」  山小屋から少し離れた泉で、月の光の下、人間の女は身を守る鎧を外して沐浴をしている。薄い肌着は身につけたままだが、まるで心の鎧を外したように青年に笑いかける。 「うん、あの竜。リーザみたいなケダモノじゃなくて、自然と一つのあの竜だよ」  ケダモノってゆーな。と、獣寄りの竜――飛竜そのものである青年は、目のやり場に困り、そっぽを向きながら答える。近くの木に持たれて女から目を逸らしつつ、視界の端の、水の滴る女の姿に面白くなさそうにする。  だって、と女は、にへらと笑いながら言う。 「ライザなんてまだ、ぷっつん来たら暴走しちゃうぞーって自覚してそうなのにな」  青年が最も不服だったのは、話の内容にではない。 「……そんなケダモノの前で、無防備にしてんなよ、あんたは」  そうしたことを話しながら、全く青年を警戒せずに鎧まで外し、反応に困る緩い笑顔を見せる女が理解できない。そして―― 「随分あんた……アニキのこと、よく見てんだな」  女の口から最近よく、青年の双子の名前が出ることが、何よりも気に食わなかった。
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