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「……えぇと、あの……」
「謝らないでくださいよ」
「あ、はい……」
わたしに言動を制限された彼は、思わずその先の言葉を無くしてしまったようだ。
一瞬見上げた初瀬さんの顔は、申し訳なさそうな顔をしていたから。
「……知って、いらしたんですか」
「……知っていなかったと言えば、嘘になりますかね」
「……そうですか」
それから、長い沈黙。
わたしは、どうしていいかわからないままだった。
「……やっぱり、すみませんでした」
初瀬さんの声が、遠くから聞こえる気がした。
「ついこの前、はじめてお二人で来店されて。
そのときは……その、あまりそんな関係に見えないというか、なんか職場の方かなと思ったんですが……」
「そんなこと、聞きたくないですよ……」
そうわたしが言うと、彼はまた「すみません」と言った。
沈黙。
ふいにわたしは、目の前のヴァイオレットフィズを飲み干した。
そして、ボソリと彼に言う。
「初瀬さん、モスコミュール」
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