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「……行きません」
「へ?」
「ぶつかってしまったことは謝ります。
でもすみません、失礼します」
そう言ってわたしは足早にそこを離れた……つもりだった。
すぐに彼らにまた囲まれてしまう。
「ちょっとー、君から仕掛けてきてそれはないんじゃない?
あそんでこーよー」
「すみません、もう帰らなきゃいけないんで!」
「えー、ちょっとでいいからさー」
「……行きませんっ」
どうしよう。なんだか頭が割れそうだ。
それが飲みすぎのせいなのか、今絡まれている状況のせいなのか、はたまた1日に2回も失恋したせいなのか、理由はわからなかった。
多分、全部だ。
彼らのナンパはなおも続いた。
「すぐそこだし。たのしいよー!」
「……やめてください」
「えー、俺たちでおごるし…」
「おい、お前らいい歳してなにしてんだよ」
ふいに、後ろから腕をひっぱられる。
バランスを崩したわたしは、ひっぱった男によりかかる形になった。
わたしはふと、彼の顔を見上げる。
……こっちも、見慣れた顔。
でも、見たことないほど表情は険しい。
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